
CHIMERIA
2025-Project, Performance, Installation

テクノロジカルに加速する現代の資本主義社会において、アルゴリズムは私たちの身体をグローバルなワークフローの中の「交換可能なモジュール」へと還元している。人類学者アンドレ・ルロワ=グーランは、『身ぶりと言葉』において直立姿勢や手の解放こそが人類の基本条件であると定義した上で、技術の自動化が行き着く先において「残された唯一の選択肢は、サピエンスであることをやめ、別の何かに変わることである」と予見した。
本プロジェクト《CHIMERIA》は、テクノロジーの破壊的転用を通して、ホモ・サピエンスの身体図式を根本から解体(捻転)し、全く新しい生命体〈キメラ〉へと生まれ直すための実験的な身体実践である。
ここで用いるのは、「眼の身体の他の部位に移植する装置」である。眼は今や、人間を効率的な労働・消費の歯車として資本主義システムに組み込む中枢的な入力端子である。これをカメラとHMDを用いて身体の別の場所に移動させる。例えば足先に目を移すと、頭は足に、脚は首に、尻は肩へと変異し、既存の身体スキームは完全に解体される。
流布された電話番号から応募し、新たな身体を切望した「志願者」たるキメラたちとともに、我々は東京の過密地域に位置する住居を占拠し、集中的な共同生活を敢行した。「頭部に眼がある人間」のために設計された椅子やドアノブなど、あらゆるアフォーダンスはキメラたちを拒絶する。その中で、彼らは生き延びるために新たな規範を再構築する。眼の近くからチューブを這わせて流動食を摂り、ワイヤーを用いて可動義肢を装備し、股間ではなく膝先から排尿するための新たな便器を開発した。彼らはこの人間中心主義的な都市空間の内部に、自らが生存するための「キメラ中心主義的領域」を構築していくのだ。
この領域は外部に開かれているが、招き入れられた観察者は布を被り、環境に「擬態」して息を潜めながらその生態を目撃しなければならない。そこで訪れた人々が直面するのは、私たちが信じる「正常な」社会システムが唯一絶対のものではないという事実である。キメラの視点から見れば、直立する人間こそが「奇妙な不具者」として相対化されるのだ。
《CHIMERIA》は、資本主義的生産性や、生物学的な自然淘汰に対する、静かなる革命である。唯一絶対にも思えるこの身体が、非常に簡単に実装可能な装置によって崩壊し、新たな身体へと「生まれ直す」ことができる。それによって、全く新しい世界が島宇宙的な外部としてこの都市空間に生起した。そうして立ち現れるのは、一時的でありながらも紛れもなく存在する、もうひとつの世界である。それはこの唯一絶対にも思える世界を無数にありうる可能性のひとつへと「降格」させる。



身体の再構築







環境の再構築





擬態観察



展覧会










Credits
CHIMERIA I (WHITEHOUSE, Tokyo)
Project Lead & Concept: Shin Hanagata
Chimeric Volunteers: Mio (Moe Yoshida), Sakaguchi (Tomoaki Sakaguchi), Yoshida (Kona Eguchi), Kumo (Yusaku Endo), Igarashi (Chihiro Igarashi), Haga (Haga Nanaha), Shikaya (Shin Hanagata)
Environment Fabrication: Takuto Ohta
Design Ethnographer: Shin Aoyama
Cinematography & Documentation: Takahiro Ueno
Curator: Tomohito Wakui
Art Direction: Arata Nagara
Hardware Engineering: Shin Hanagata
Suit Fabrication: Karu Miyoshi
Enclosure Fabrication: Juri Fujii
Production Support: Keiichi Hayashi
Web Development: Shin Hanagata
Special Thanks: Izumi Enaga, Funimu Someya
With support from: The Project to Support Emerging Media Arts Creators, Agency for Cultural Affairs; Arts Council Tokyo; KUMA Foundation