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朝の光の中で、 朝の光の中で、 …
耳鳴りのように脳内で自動ループされるショート動画。これを認識するたび、僕はシステムに組み込まれたモジュールであると気づく。35億年の歳月をかけて作り上げられたこの眼と手、神経組織の全ては、ショート動画を認識し、画面をスクロールするためにあったのだ。
今、感じている全ての重み。全ての鎖。これまで身につけてきた、恥や礼儀、労働、時間、重力、これらは自ら望んだわけではない、生まれた時にすでに埋め込まれていた現実だ。
この唯一の現実が、 この唯一の振る舞い、 この唯一の思考、 この唯一の「人間」という枠に僕らを縛り付けている。
テクノロジーはそれを際限なく加速する。 生産性のために設計されたアルゴリズムは、肉体をより効率的に機能を取り出せるモジュールとして最適化し、僕たちに、ひたすら広告を閲覧する情報処理ノード、あるいはギグエコノミーに組み込まれる安価な労働アクチュエータとしての生を与える。これがマン・マシン・システムとしての現実だ。
人間よりも高度な論理能力を持つAIが思考し、高度な運動能力を持つロボットが駆動する時、「人間」であることの唯一の意味は、読むこともない同意書にチェックを入れ、彼らの責任を取ることだけだ。
この現実を自覚せよ。

1

では、いかにしてこの唯一の現実を抜け出すのか? そこには前提が存在する。それがこの身体だ。 頭蓋の前方に二つの眼球。その下に一つの口。四肢は重力に対して垂直にぶら下がる。この配置が、椅子を生み、階段を生み、便器の構造を生み、改札を生み、ディスプレイの形状を生んだ。
入力端子である目や耳や皮膚、出力端子である手や筋肉や声帯、それらと関係する他者や技術。この身体の配置を前提としてシステムは構築される。
この現実の前提を〈再配線〉したらどうなるか。
例えば、足先に目を移植する。 激しく視界がブレる。空間が把握できない。突然、5本の突起がついた奇妙なアームが視界に入る。手だ。感覚が同期する。やがて、足は頭になり、脚は首になり、両腕は後ろ脚になる。役割が変性し始める。もう一度生まれ直す。世界が鮮烈に訪れる。
あるいは、椅子に座るのではなく、椅子になる。 道具の使用者から道具そのものへと変性する。椅子として見出され、座られる。尻が自分の肩に乗った瞬間、肩と床との間に圧力を感覚する。そして、両腕をぶら下げるために存在していた肩甲骨と鎖骨はいま、椅子としての一本のリムとなる。
このとき、人間と技術との相互関係が変性し、人類史のはじまりから僕らを支配してきたマン・マシン・システムの前提が〈ギュリン〉と裏返る。
記憶、倫理、習慣、所作、これまで従ってきた現実が、新たに再配線された感覚器によって異なる質へと変性する。それでもなお、既存のリアリティは消えることなく、新たなリアリティと摩擦しながら共存する。人間でも機械でも動物でもない、捻れたキメラ。 再配線された現実と、既存の現実とが嵌合し、互いを捻り続けること。
これを〈捻転〉と呼ぶ。

2

捻転した肉体は〈新しい欠損〉に直面する。
階段は断崖絶壁のように聳え、ドアノブは掴みようのない形状となり、食事もままならない。これまで無意識に享受してきた全ての環境が「正常な」身体のために設計されていたことが突きつけられる。
捻転した肉体が存在することそのものが、世界を歪める。 生きるために新しい歩行、食事、排泄、睡眠を生み出す。 それを実現するための義肢、道具、建造物を発明する。 他者と相互作用するための身振り、言語、倫理を獲得する。 彼ら自身が存在するための世界を再構築する。
これによって、もはや従来の「人間」としての身体では適応不可能な領域が生まれる。それは、捻転した肉体が現れる場所に勃発し、「正常な」生活空間に、島宇宙的な外部を生成する。
捻転した肉体は世界を捻転する。

3

この与えられた現実を自覚せよ。——巨大なマン・マシン・システムの何十億ものモジュールの1つとして制御された生を生きていることを感覚せよ。 この与えられた肉体を捻転せよ。——この現実の前提となる感覚器、身体構造、他者との関係を再配線せよ。その新しい肉体をもって生きるリアリティを感覚せよ。 この与えられた環境を捻転せよ。——捻転した肉体の欲望に従って、必要な道具を、義肢を、寝床を作れ。自らの規格で領域を再編せよ。
時間や場所を限定せず、どこでもこの原理を実行せよ。自宅に、街路に、地下鉄に、オフィスに、山に、検索履歴に、AIとの対話に持ち込め。慎重に、既存の身体、既存のインフラを再配線せよ。
そのとき、この唯一に思えた倫理、時間、空間、重力が崩れ去り、既存の現実は決定的に〈相対化〉される。 生まれてから今まで全てを支配してきた絶対的な現実が、無数にありうる現実のバリエーションに〈降格〉する。
その肉体を〈捻転〉せよ。 そして、この現実を〈降格〉させよ。