
still human
2021 | a flesh practice, performance
人間であるということ、それは自由意志をもち、それに伴う責任を全うし、自律的な個人として尊重されること。だがそれは、この高度資本主義社会において、アルゴリズムによってフィルターバブルに閉じ込められる我々が狂ったように繰り返すクリックや、企業のシステムに管理されながら行動する安価なアクチュエータとしての労働を肯定する論理に成り果て、我々からの搾取を加速する。そして、「理想」の人間となることを駆り立てる。
そんな世界で疲れた私は、自由意志、責任、個人という幻想から離脱し、人間性の放棄を試みる。
私は、足先にカメラを装着し、その映像をヘッドマウントディスプレイを通して見ている。つまり、私の目は足先に移される。このことは、私の身体全体を変性させる。「前」は足先の方向へと変わり、それによって体の使い方が全て変化していく。私はまるで生まれたばかりの生物のように、新しい身体の使い方を試行錯誤する。とにかく前進したい、目の前のものをよく見たいという欲求に支配され、言語的思考は失われていく。見たことのある世界がまるで初めて見たものであるかのように新鮮に映る。触覚が私を世界に位置付けてくれることが嬉しい。確かに今、私は何か違うものになり変わりつつあるという感覚を味わっている。
「意志」を持つ脳が身体を隷属させる構造を反転させるようにして、私自身の身体を反転し、この「意志」の幻想が駆動する世界が反転する。そうして私は、我を忘れて「人間」から逃避する。
Credit
Shin Hanagata
Shows
「トランス・ペアレンタル・コントロール」, 新宿眼科画廊 (2021)